『結婚との出合い 僕の場合は…』
ペンネーム:36歳のマツ
転勤が決まったあこがれの女性の先輩の送別会の席で、その先輩から「佳江ちゃんのことを頼むわ。面倒みてやってね。案外いい子なのよ」と言われ、素直に「はい」と返事をしました。
先輩の下についていた彼女は、どちらかと言うとドンくさくて、実はそれまで私も「ちょっと難儀な子やな」と思っていたのでした。
しかし尊敬していた先輩の頼みですから無碍(むげ)にもできません。きっと私には見えない良さがあるのだと彼女を見直して、接するようになっていったのだと思います。
案の定、彼女はいろんな失敗をして、周囲にも迷惑を掛けることもありました。そんなときポッチャリした体を縮めて本当にすまなさそうにしています。見か ねて手伝ってあげると、「ありがとうございます」と、すごくうれしそうに言います。「素直なところがあるなあ、いい子だって先輩が太鼓判を押しただけあ る。きっと心がきれいなんだ」と思えていったのでした。仕事に悩んだり行き詰ったときに、彼女のふわっとした笑顔に癒されたことも幾度かあって、ごく自然 に、お茶に誘って、映画に行って、食事をして…1年後にプロポーズ。
結婚の報告を兼ねて先輩を訪ねたとき「あの日のひと言のおかげです」とお礼を言うと、先輩は「えっ何それ?」。「佳江をちゃん頼むって言わ れたじゃないですか」……「まさか、あの時はかなり酔ってたから何言ったか全然覚えてないのよ。そうか…ごめん。何でそう言ったか自分でも分からない。ま さかそれで結婚したの?ええっ?うそ(!!×100ぐらいの驚き方でした)」
とにかく結婚してしまったのでした。相変わらずドンくさくて、頼んだ用事も忘れるし、家事もお世辞にも上手とは言えないうちの佳江ちゃん。でも、「ごめ んね」と言う時の可愛さと「ありがとう」という時の笑顔だけは最高です。あのふんわりとした雰囲気が、「ああ、結婚してよかったなぁ」と思わせてくれま す。
余談ですが、人間には二通りあって、何かにつけて人の手助けが必要なタイプと、そういう人の面倒をみるタイプがあるんじゃないかと思いました。もちろん彼女は前者で私はどうにか後者だったようですね。
あの時先輩が酔っていなかったら……いえ、酔っ払っていたおかげで、こうして今があるわけです。こんな私が言うのも何ですが、未婚のみなさん、結婚って案外いいものですよ。どうかあなたに、すてきな出会いがありますように。