『笑うから楽しくなる』
「ああ、何か楽しいことないかなあ」
入社2年目のユリコは、仕事に追われる日々にいくらかお疲れ気味です。ため息をつきながら書類の整理をしていると、どこからか笑い声を聞こえてきます。
声のする方を見ると、うれしそうに笑っているのは新入社員のナギサです。よほど楽しいことでもあったんだろうなあ、とユリコはまた書類に目を落とします。
翌日も仕事に追われるユリコ。昼食に社員食堂に行くと、中から笑い声が聞こえてくるので、誰かと見ればまたナギサです。トレーを手に近くの席に座ってみます。
「あなた、いつも笑っていて楽しそうね」
「あ、ありがとうございます」
「楽しいことがいっぱいあるんでしょうね」
「楽しいことはそんなにありませんよ」
「あら、だっていつも笑ってるじゃない」
「楽しいことがあるから笑うんじゃないんです。笑うから楽しくなるんです」
「ええっ、そうなの」
ユリコはナギサの言葉にびっくりです。
半信半疑のユリコ。元気よく笑うナギサみたいなわけにはいかないが、だまされたと思って顔の表情をにこやかに心がけてみると、あれ、何だか楽しくなってきました。