『やさしさにつつまれて』
ペンネーム:ローズマリー
ある朝のこと。夫が「今日はなんだかナーバス?」と私の顔をのぞき込みながらつぶやきました。
確かにあの時の私はかなり硬い表情だったと思います。というのは、日ごろからお稽古をしている茶道の初釜で、例年は“お茶のお運び”として楽しく参加させていただいているのですが、今年はいつもと勝手が違っていたからなのです。“点て出しの係”とのご指示をいただいてしまったのですから、さあ大変です。「大切なお客様方へお出しするお茶を点てるなんて、私にできるかしら」と急に不安でいっぱいになってしまっていたのでした。
そんな事情を夫に話すと、「大丈夫、君ならできる。僕も祈っているから安心して行っておいで」と、やさしく背中を押してくれました。
すると不思議なことに、お茶を点てている間、お抹茶の香りと共に夫の笑顔がふんわりと浮かんでくるように感じ、あれだけ苦手と思っていたことがまるでうそのように、無事お役を果たすことができました。夫の愛を感じずにはいられない幸せな一日となりました。