『花のき村と盗人たち』
ある日のこと。テレビを見ていた夫が、突然に立ち上がったかと思いきや、子供の本棚をごそごそ、ごそごそ…。
するとしばらくして「あった、あった!この本この本!!」と、うれしそうに1冊の本を手に取って部屋から出てきた。
「いやあ、ニュースで新美南吉さんが今年「生誕100年」って聞いたら急に懐かしくなっちゃってさ。新美南吉さんっていうと、『ごんぎつね』とか『手ぶくろを買いに』が有名だけど、僕はこのお話が一番好きなんだなあ…」と懐かしそうに本を開いた。その本のタイトルは『花のき村と盗人たち』。
それは、花のき村というのどかで平和な村にやって来た五人組の盗人たちが、盗みを働こうと村の中をさまようが、その五人組の親分がたまたま出会った村の男の子によって心を洗われ改心していくという物語。
「…花のき村の人々がみな心の善い人々だったので、地蔵さんが盗人から救ってくれたのです。そうならば、また、村というものは、心のよい人々が住まねばならぬということにもなるのであります。」 |
(本文から引用) |
静かな昼下がり、本を読む夫の傍らにそっと寄り添いながら…ゆったりとした時が流れていく。
「何度読んでも感動するなあ〜」とつぶやく夫の横顔には、温かそうな涙が光っていた。
『花のき村と盗人たち』
新美南吉 | 著 |
『新美南吉童話傑作選』 | |
イラスト | 長野ヒデ子 |
出版社 | 小峰書店 |