『陽だまりの彼女』
私が勤務している図書館でのエピソードをひとつご紹介〜。
ある日のこと、図書館の閉館間際に「『陽だまりの彼女』貸してくださ〜い!!」って叫びながら、中学生の女の子がすべり込みでやって来た。
実はこの本、まだ図書館に入荷ホヤホヤで、それを知らせるための「図書館ニュース」をついさっき、張り替えたばかりというタイミングで借 りに来てくれたのだった。これほど早い反応はいまだかつてなかったことだけに、私にとっても飛び上がらんばかりにうれしい出来事だった。女の子は早速その 本を手に取るや「書店で見てから、ず〜っとずっと気になっていたんです。図書館に入ったなんて、うれし過ぎま〜す!!」と、借りたばかりの本をギュッと抱 きしめながら帰って行った。
さて『陽だまりの彼女』の内容はというと・・・主人公は10年ぶりに偶然再会した幼ななじみの彼と彼女。さえなかった彼女が驚くほど“で きる女”になっていて・・・そして2人の間には恋心が芽生え・・・と一見、普通の純情恋愛小説かと思いきや、あれあれ??どうも様子が違っていて・・・最 後の最後でまさかの大どんでん返し、前代未聞の結末が待っていたのだった。
数日後、「最高に面白かったです!」と、女の子がこの本を返却にやって来た。
そして「感想を語ってもいいですか?」と言うが早いか、頬を紅潮させてこの本の魅力を語り始めた。語って語って・・・たっぷりと満足いくまで語りまくっていった。
女の子が去った図書館には、彼女をとりこにした『陽だまりの彼女』が、優しくそして静かたたずんでいるようだった。
『陽だまりの彼女』
越谷 オサム | 著 |
新潮文庫 |