『はらぺこあおむし』
娘がまだ幼稚園に通っていたころのこと。ある日、大きな絵本を大事そうに抱えて通園バスから降りてきた。
「ママあのね、きょう、まゆみせんせいがよんでくれてうれしかったの。だからママにもよんであげるね。」
家に帰るやいなや、「ママ、早く座って~」と、娘は大好きな真由美先生になりきって、ページをめくりはじめた。
私の膝にちょこんと座った弟のあっくんもお姉ちゃんの広げた絵本にくぎづけだった。
その本の名は、「はらぺこあおむし」。一匹のあおむしが美しい蝶になるまでを描いた絵本だった。りんごやなしやすももを次々と食べてだんだん大きくなって・・・さなぎになって・・・やがて・・・、
「あおむしが、きれいな ちょうに なりました。」 |
(本文より引用) |
娘は、まるで絵本の中のちょうが、ひらひらと宙を舞っているかのように本をパタパタさせながら、部屋の中を駆け回って喜んでいたっけ。あっくんも、ちょうちょ、ちょうちょ~ってお姉ちゃんの後を追いかけていたな。
その数日後、庭で探検ごっごをして遊んでいたあっくんが、「ママ~、きて~!はらぺこあおむし!!」と目を輝かせて飛んできた。
どれどれ・・・後についてのぞいてみると、葉っぱのかげに一匹のあおむしがかくれていた。
お姉ちゃんが読んでくれた「はらぺこあおむし」のこと、覚えていたんだね。
いつの日か「はらぺこあおむし」に負けないくらい大空高くはばたいていけ~ってふたりの後ろ姿につぶやいていたな、あの頃・・・。
『はらぺこあおむし』
エリック=カール | さく |
もり ひさし | やく |
偕成社 |