【愛のコミュニケーション講座】
『第3話』
愛は大学1年生。入学してひと月を過ぎたころから、円形脱毛症になって通院していますが、一向に治りません。医者にストレスが影響していると言われたこともあり、高校の先輩でもあるエルミに相談し、紹介されたハッピーおじさんを訪ねることにしました。
〓ハッピーおじさん相談室〓
愛は自分でストレスの原因が分かっていました。
両親と妹が2人の5人家族の中で、愛は小学校6年生のころから体の弱い母親を手伝って食事の支度をする傍ら、「私がいるから大丈夫」とけなげに振舞っていたのです。ところがこの春から父親が単身赴任となり、一層心細くなった母親のことが気がかりとなっていたのです。
状況は変わらないので、しかたが無いんだという愛の話は、あたかも「この病気は治らなくて当たり前」と言っているようにも聞こえてきます。
ゆっくりと安心して自分の日常を話しているうちに、「私の時間がない!」と、プッと噴き出すように言った愛の表情が、ホッとした明るさに変わりました。口に出して表現したことでこころの緊張が解けたようです。
父親が単身赴任をしたころから、「自分の時間がない」と思うことが繰り返されていたようですが、いつしか持ち前の何でもしようという前向きな気持ちが蓋をしてしまい、体への負担にもなっていたようで、考えるゆとりもなくしていたようです。
愛のほっとした感じに気づいた先輩のエルミも安心しました。この後、問題だった脱毛症も快方向に向かったようです。
愛は言いたいことが言えたようです。心からの表現のきっかけとなった脱毛症の症状に不思議と感謝の気持ちでいます。